April 20, 2020

持てる者と持たざる者 ~不動産, 油田の価値観が変わるかも?~

導入

戦後最長の好景気期間を終え、2020年コロナショックにより株式市場は大きく下落しました。
景気にはサイクルがあり、いつかは下落局面が来るもので2019年の秋頃から株式市場の時価総額 ÷ 国のGDP × 100で表されるバフェット指数は既に2000年に起きたドットコムバブル崩壊時と同じ水準に達し、いつ終わってもおかしくないと言われていました。

Buffett Indicator

Buffett indicator of US Stock Market: https://www.gurufocus.com/stock-market-valuations.php

石油

この株式市場の下落の要因は、新型コロナウイルスによるものだけではなく原油価格の下落もあると言われています。
これはWTIの先物原油価格です。2014年頃にシェール革命により大幅に下落していますが、ここ5年は50-70ドルのレンジで比較的安定していました。しかし今年に入って年初のバレル70ドル近い価格から安値の15ドル付近まで80%近い下落となっています。

WTI先物原油

この原因は、単純に1つだけでは無く、アメリカのシェールオイルやサウジアラビアとロシアの問題と複雑な要因があるので興味のある方は調べてみてください。簡単に一言でまとめるとサウジアラビアが減産に合意せず、むしろ増産すると言った事によって原油価格は大幅に下落しました。

トランプ氏「サウジ・ロシアが原油大幅減産に合意」 - 日本経済新聞

【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領は2日、CNBCテレビのインタビューで産油国のサウジアラビアとロシアが日量1000万バレルの減産で近く合意するだろうとの見通しを語った。ツイッターでは減産量が1500万バレルにのぼる可能性があるとも指摘した。ニューヨークの原油先物相場は2日、前日比で約30%上昇する場面があった。トランプ氏は2日、サウジのムハンマド皇太子と電話協議した。トランプ氏によると、

4月3日には減産合意に至ったとして、原油価格も安値の20ドル付近から30ドル付近へと30%近く戻していますがまた下落しています。 なぜなら原油の用途は主に車や飛行機のジェット燃料等の乗り物で消費されます。2017年のデータ によると47%がガソリンに使われ、8%がジェット燃料に使われています。つまり原油の半分以上が人々や物資の移動のためだけで消費されています。
ご存知の通り現在は新型コロナウイルスによって、世界各国は大幅に移動を制限しています。そのため原油の需要が著しく低下しているにもかかわらず供給され続けている状態です。
また、原油の在庫量も過去最高圏になっており(以下の図)、世界の貯蔵施設全体の石油貯蔵レベルは平均で約4分の3まで上昇しています。(Source: The Guardian 以下のリンク)、米国原油在庫量は過去の歴史を見ても一番高い状態になっており、原油貯蔵庫が逼迫しているのがわかります。

Oil price may fall to $10 a barrel as world runs out of storage space

Facilities thought to be 75% full with Saudi Arabia due to ramp up output as demand falters amid coronavirus shutdowns
米国 原油在庫量

米国 原油在庫量

アスファルトの価格も既に4月17日時点で3$をつけており(Wyoming Asphalt Sour Price )、一部では需要が無く捨てるコストによってマイナスで取引されているとも言われています。

このままコロナウイルスの影響により需要が増えず供給過多が続けば、貯蔵できずにさらに原油価格がさらに下がる可能性があります。(記事を書いていたのは4月上旬だったのですが、4月20日時点で既に直近安値を割りバレル15$をつけました)
つまり、今まで地球の資源を売るだけで儲かっていた資源国と呼ばれる国は今までのような経済圏が維持出来なくなる可能性があります。

不動産

持てる者の代表的な資産は不動産です。世界レベルでは上記で紹介した石油ですが、一般人特に日本人からすると程遠い存在です。
私は家にいることが好きなので家への投資はQOLに大きく関わります。そのため、家を買って広い家に住むほうが良いのでは?と思い、2年程前に、このまま家賃を払い続けるパターンと家を買ってローンで払うパターンのどちらが良いのかを調べていました。
その時に思ったのは、不動産の価格は本来の価値よりも異常に釣り上がっているということです。

日本の人口は減少しているにも関わらず、一時的にリーマンショックで停滞はしているものの、東京都内のマンション価格は上昇し続けていました。

東京都のマンション価格推移 m^2単価(万円): https://www.fudousankeizai.co.jp/

なぜ人口は減っているにも関わらず都内の不動産価格が上がっているかというと、中国人をはじめとした外国人投資家の売買、地方または外国からの人口流入による需要によるものでした。
しかし、私はこれから不動産価格は下がると思っています。いろいろな観点で不動産の価格決定要因を考えてみたいと思います。

生産緑地問題

有名なのは2022年に起きる生産緑地問題 ではないでしょうか。
簡単に言うと都市部の緑を守るために税制優遇をして農地を保護していたのですが、2022年にその税制猶予が無くなり固定資産税、相続税の増加より土地が大幅に供給されるのではというものです。
これだけで不動産価格が下がる理由になるとは思いませんが、わずかには影響があるのかなと思っています。

人口増加

都市移住

東京へは地方からの移住や単身世帯の増加が進んでいます。
東京都の世帯数は単独世帯、夫婦のみの世帯の増加により人口は減少しているにも関わらずここ10年で10%も増加しています。 これにより供給よりも需要が上回り都心の家賃は上昇していきました。

東京都世帯数

東京都の世帯数の推移と予測(東京都発表資料より)

東京都の発表によると東京都の世帯数は2030年代にピークを迎えます。 つまり、コロナ等の外部要因関係無く今後不動産価格が値上がり続けるとしても2030年代には需要と供給のバランスにより、ほぼ必ずこれまでのような上昇のみの相場ではなくなる事が予想できます。

外国人の移住

東京都の統計、外国人人口を各年まとめたもの: https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/gaikoku/ga-index.htm

外国人の移住も東京都の人口増加の大きな要因となっており、物件の需要増加の手助けをしています。
こちらは予測値がわからないのですが、上記の東京都の発表によると外国人増加率も2030年がピークになるのかもしれません。

ちなみに、日本不動産研究所の調査によると、2019年の10月時点の都市別土地価格変動率の世界1位は意外にも大阪みたいです。 2010年10月を基準にした都市別オフィス価格指数を見てみるとこのようになっています。東京は割安と思われて買われているのかもしれません。それでも一般的な日本人からしたら相当な額になっていますので厳しい状況です。

世界の都市マンション賃料

日本不動産研究所: http://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2014/06/13th_201910.pdf のグラフを利用

外国人の投資

日本の不動産が上がっている大きな原因は中国人をはじめとした外国人による不動産の購入です。
不動産の売買戸数実数値を見つける事が出来なかったので、今回は東証証券取引所で扱っている不動産指数であるJ-REITの数値を使用しています。

(左軸は売買, 単位は十億円, 右軸はNet, 単位は十億円)

J-REIT 投資部門別売買状況 をまとめたもの

上のグラフはJ-REITにおける投資家売買比率です。
グラフを見れば一目瞭然となっていて、日本の不動産に投資を行っているのは我々日本人ではなく外国人投資家なのです。 外国人投資家の中には法人と個人も含まれる為、このグラフの直感的な感覚とは異なりますが、過半数以上は外国人投資家によって支えられているのです。
Netポジションも2016年から買い越しが続いており、依然として外国人による日本の不動産買いが続いている事がわかります。 : ただ、直近2019年でポジションの大幅な縮小があるのは既に2019年の段階で外国人投資家は手仕舞いを始めているのかもしれません。これは日本の不動産税制もあると思っていて、所有期間が5年以下だと税率は39%ととてつもなく高いですが、5年を超えると税率が20%に下がるため2013年あたりから増えた買い越しの物件を手仕舞い始めている可能性もあるかもしれません。実際はオリンピック前の高値売り逃げなのかもしれませんが、専門家ではないのでわかりません。
(日本人の個人売買比率が年々下がっているのは、日本人が搾取される側に回ってしまっているのを表している気がして悲しくなりました。)

空室率

総務省の住宅・土地統計調査 によると、日本全国の空き家率は13.6%となっており、数は846万戸、賃貸用・売却用だけで460万戸あります。

Vacancy rate in Japan

平成30年住宅・土地統計調査より

HOMESのデータ によると東京都においても千代田区では36%, 目黒区でも28.2%と想定しているよりも空室率が目立っている事がわかります。

Vacancy rate in Tokyo

つまり既に460万人のオーナー達が、家賃収入ゼロで管理費や税金で赤字または、売りたくても売れない状況になっている可能性が高いです。
今後コロナの影響が続くとすればこの割合が増えると予想されます。

メディアの影響

私は、ここ2,30年の都市人口集中や単身世帯の増加はメディアのポジショントークも大きく影響されていると思っています。
ニートや引きこもりといった問題を大きくとりあげ、成人してからも家族と住み続けるのはダサいという風潮を作り上げ一人暮らしを促すような雰囲気を作り上げてきました。(親に頼り続けるのは良くないとは思いますが) なぜかというと、大手民放の収益柱に不動産収入が大きく含まれているからです。
つまり、一人暮らしをして家を借りる人が増えれば回り回って彼らの収益も上がる仕組みになっています。

収益における不動産の割合決算資料
日本テレビ約7%(2019年3月期決算)
TBS約28%(2019年3月期決算)
フジテレビ約4%(2019年3月期決算)
テレビ朝日6%(2019年3月期決算)

日本テレビは好調な番組が多く番組収益の割合が一番多いですが不動産は収益の3本柱の1つとなっています。TBSに至っては28%ともはやテレビ局というよりは不動産会社の一面も見せています。フジテレビとテレビ朝日は他2社と比べて多くの事業に手を出していますが不動産の割合も少なくはないです。 テレビ局なので売上は当然放送事業のものが多いですが番組制作コストがかさむため、手間が番組制作ほどかからず営業利益率が高い不動産は民法各社の収益柱の1つになっていると言ってもいいでしょう。

コロナによる影響

コロナウイルスの影響で、今までリモートワークを行っていなかった会社でもリモートワークの流れが進み、 リモート会議でも問題がないとわかれば今後わざわざ遠方に出張して会議に参加するという無駄な行動も減る可能性が高くなるでしょう。
幸いにもコロナウイルスは日本、世界のIT化を急激に押し進めました。 これは、不可逆的な変化になる気がしています。
IT化が進みリモートワークが広まれば東京等の都市部に集まる理由が減ります。 一部の企業では既にコロナウイルスによる長期的な影響を見越してオフィスの賃貸契約を解約している企業も見受けられます。(AXIA , overflow ) 企業だけでなく、現在東京に住んでいる知人も、もしリモートワークが常に続くとすれば東京にいる意味が全くないという声も聞こえてきました。

まとめ

素人ながら、持てる者の代表資産である原油と不動産について調べてみました。

今までは住宅費が高いのは当然だという無意識の刷り込みが行われてきました。 データでも示したとおり、持てる者であるメディア等の策略が少なからずあると思っています。
日本人平均給与の中央地427万(厚生労働省資料 )とした場合に税金を差し引いた月額28万円のうち3分の1は住宅費に消えてしまうことになります。これは全世代の平均なので、20代の場合はおそらく手取りの半分近い額になります。 これは今までは当たり前と思っていましたが、異常な数値だということがわかります。 持たざる者は持てる者のために仕事をしているだけです。

もともと不動産について調べ始めたのは知り合いから不動産投資をしないかと言われのがきっかけです。 不動産は名前の通り数ある資産の中で一番流動性の低い資産です。株や為替、保険等の金融商品は最悪間違っていれば損切りをすることで負債を解消することが出来ます。しかし不動産は損切りをする事がとても難しいです。
個人的に不動産投資に手を出していいのは、富裕層かつ既に株等の投資をしていて、それでもお金が余っている分散投資目的の人か、本気の投資目的で不動産の経営をするタイプのみだと思っています。今までは上昇トレンドにのって放っておいても不動産の価値は上がり続けましたが、これからは、サラリーマンが片手間で放置しておけば良い簡単な投資では決してないと考えています。

しかし、この流れは持たざる者にとっては絶好のチャンスかもしれません。
今までは、持てる者は富を増やし、持たざるものは富を失っていくしかありませんでした。 現状の科学では完全に排除するのは難しいので有り得ないとは思いますが、もしかするとあれだけみんなが欲しがっていた油田さえもコストになる時代になるのかもしれません。
新型コロナウイルスによる影響がいつまで続くのかわかりません。 従来の物理的なものを持った形態や、イベント業はもしかすると大きな変革を余儀なくされるかもしれません。 自分はソフトウェアエンジニアなので、このような時代の変化はとても歓迎しています。次の10年がどうなるかは誰にもわかりませんが、この変革期はこれまでの世界を大幅に変えるきっかけになると思っています。
もしこの状況が今後数年続くのであれば、日本のようなモノづくりをしてきた国にとっては追い風になると思います。

さいごに

このような状況でも需要がある物件の価格はそこまで下落はしないのではないかと思っています。 念の為書いておくと、この記事で言いたい事は、これから不動産が暴落し続けるということではなく、今まで価値以上に評価されていたものが適正価格に戻ると思っています。
そのため、今後は投資目的の不動産は利回りの低下により以前よりは旨味が減るのでは無いのかと思っています。投資目的ではない住居のための不動産購入は相場より高いものではなければ買っても全然問題無いのではないでしょうか。
もし直近で購入を検討しているなら、マンションよりは戸建てをおすすめします。戸建ては土地も含むため価値が下落しづらいですが、マンションは空間を売ってるため供給量が多く土地もわずかしか含まれないため、価値が下落しやすい傾向にあります。

※ この記事は投資を促すものではありません。素人の勝手な予測なので投資による責任を負いかねます。

参考サイト、資料

調べれば知りたい数字がすべて公表されていて政府って凄いんだなと思いました

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